「京都で暮らす。」
ほんとの希望は、ニューヨークかパリで暮らすことでした。
でも、そこにいることはできても、暮らすことはできない、そう思って諦めました。
もしかしたら、諦めなくてもよかったのかも。
お金を握りしめて、行ってみればよかったのかも。
でも、やっぱり、働きたかった。
なので、私はニューヨークとパリの次に「文化」が蠢いている街、
の中で最も自分の近くにあった街、京都で暮らすことにしました。
京都で暮らして何が楽しかったって、センスを磨けたことがほんとに楽しかった。
仁和寺のふすま絵の繊細さ鮮やかさ、祇園祭でお囃子を奏でる男衆の色っぽさ、
鴨川から見渡す山々の美しい稜線、プライドと独自の美意識を持って営まれているお店の数々。
京都の町の空気を吸いながら生活するだけで、仕事人としての私の美的感覚がどれだけ刺激されたかわかりません。
この町に住むこと自体が勉強でした。
と言いつつ、休みの日はぐうたらしてることも多かったし、
オーボエの練習に必死で、国宝級の神社仏閣を自転車で猛スピード素通りは当たり前でしたが。
まぁ、とにかく、京都に暮らせてよかった。
「ありがとう。また帰ってきます。本当にありがとう。」
一番よくうろついた、河原町御池の交差点。