電車に乗って、いざミュンヘン。
ホテルに着いて思ったのは、
「ミュンヘンて、洗練されてる!」ということ。
同じドイツでも北東部の都市とはまた違う雰囲気。
地形的にイタリアに近いこともあり、スタバのお兄ちゃんもめちゃくちゃ陽気です。
日本食が食べたくて、雨の中をてくてく歩くこと小一時間。
こういうの、日本にも作ってほしいな〜。
ミュンヘンの”sushi cent”で、お寿司をいただきました。
日本のsoul foodから、世界のsoul foodへ、だね〜。
お寿司とキャンドル。
これもまた、sushiグローバル化の象徴ですかね。
さてさて、ミュンヘンはたった2日のステイです。
本当はすっ飛ばしてもよかったのですが、
せっかくザルツブルクまで来て、電車で2時間かからないミュンヘンに寄らないのもな〜、
ミュンヘンには、ミュンヘン・フィルとバイエルン放送響という、
世界的なオケが2つも存在してるしな〜、
ということで、やってまいりました。
1 Feb 2013
指揮:H.ブロムシュテッド
演目:ドヴォルザーク「聖書の歌」、モーツァルト sym.40 他
結果的に、ミュンヘンに来たことは、
このヨーロッパの旅の中でも、とても印象深い体験の一つになりました。
ヤンさんというメガネのおじさんに出会いました。
とても背が高く白髪混じりのまじめそうな方でした。
演奏会前、咳をしている私に、「ハンカチを貸しましょうか?」と話しかけてくれました。
その後、演奏会が始まるまで少しお話をしました。
ちょっと話は飛びますが、
この旅行の中で、本当にたくさんの見知らぬ方が、私に話しかけてくれました。
知らない人に対して人見知りをするのではなく、軽く話しかけてお話をする。
こういうの、社交というのでしょうか。
見習いたい文化だなと思いました。
そして、世界とつながるための言語として、
英語を話すということの意義というか、素晴らしさというか、
そんなことも肌で感じることができました。
さて、バイエルン放送響。
コンマスが際立って熱くて、弦楽器群がいい意味で一生懸命でした。
アムスからいくつかのオケを聴いてきて、
一流のオケもふつうに演奏がズレることがわかりました。
曲の最初とか、特に。
でも、ズレるということがそんなに気にならないのは、
彼らの演奏がとても魅惑的な証拠です。
人でもそうですよね。
欠点がわかっていても、それを大きく上回る魅力のある人に惹かれたりしますよね。
彼らの演奏は、どうしてこんなにステキなんだろう、と考えたとき、
その理由のひとつは、”イメージ”だな、と思いました。
オーケストラに演奏者が80人いたら、80人がほぼ近いイメージの音楽や音色を描けているのです。
例えば、「シュークリームの中のカスタードクリームのように甘くてしっかりした」音を出して、
と指揮者に指示されたとき、80人ができるだけ同じカスタードクリームを描いていると、
カスタードクリームのように甘くてしっかりした音が、お客さんにもそう聞こえてきます。
そして、演奏中に、「この場面ではこんな音!」というイメージを的確に指示するのが、
指揮者の役割でもあります。
この日の指揮者ブロムシュテットさんは、NHK交響楽団の指揮などでおなじみですが、
この人のおもしろいところは、指揮のスタイルです。
日本でも人気の佐渡裕さんとか、ゲルギエフさんとか、ダイナミックに指揮をするのがかっこいい人たちですが、
ブロムおじいさんは、彼らとはまったく逆のスタイルで、
どっちかっていうと小振りで、ご自分の顔のまわりで、ちょこんちょこんとかわいらしく指揮されます。
で、ところどころ、「そこはこうだよ」と指示を出すのですが、
彼が楽しそうにすればするほど、オケのメンバーがどんどんヒートアップしていくのです。
これは本当におもしろい。
一流の指揮者は、オーケストラをやる気にさせ、その気にさせ、
指揮者の手のひらの上で転がされてるのに、演奏者はその状態に無情の喜びを感じ、
ひたすら目の前にある音楽を追い求める。
そうやって、どんどん、どんどん、音楽が前に進んでいくのです。
そして彼らは、熱くなればなるほど、凄まじいアンサンブルを発揮します。
(アマチュア奏者は、熱くなればなるほどアンサンブルが乱れるのが一般的です、笑)
どんどん前に進むモーツァルト。
勢いが凄まじすぎて、ガケから落ちるのではとハラハラするテンポ。
でも、こんなにエキサイティングな演奏は今まで聴いたことがありませんでした。
一流のオケが本気になったとき、
子供のように澄んだ集中力で音楽に熱中したとき、
こんな演奏になるんだ、というのを教えてもらえました。
これは、いい経験になりました。よかった、よかった。
演奏中、ドヴォルザークの英語の歌詞カードをそっと渡してくれたヤンさん。
恋するかと思うくらい、嬉しかった。
幻想的なレジデンツ。
夢ごこち。
おやつもおいしい。
ミュンヘン、また来たい。